エベレストベースキャンプ紀行⑤

 この記事では2020年3月1日から9日間かけて行ってきたEBC(エベレストベースキャンプ)トレッキングの様子を書いています。

 



2020年3月5日(木)

6時半、自然に起床。

カラン、カランと窓の外からカウベルの心地よい音色が聞こえてきます。

隣の部屋のオランダ人がモゾモゾしてるのも感じ取れます。どれだけロッジの壁は薄いんだろうか。

夜中は3、4回目が覚めました。

具合が悪くて死ぬかと思ったのは1回、あとは毛布を重ねて体が熱かったりで確か起きました。

外に出てみると、今日も見事な快晴です。

この調子でベースキャンプまで天気が持ってくれたら最高だなー。

ふと、ライチョウが遠くから飛んできて、僕の近くまでやって来ました。日本のライチョウは気候変動などの理由から数が減り大きな問題になっていますが、ヒマラヤのライチョウはとても恵まれた場所に棲んでいると思います。なんか元気です。

日本のライチョウは冬になると雪と同化するために保護色である白い毛に覆われるのですが、近年は暖冬などの影響で山が雪で覆われにくくなり、その結果天敵に見つかり食べられてしまうことも多いと聞きます。

僕は地元山梨でライチョウサポーターの一員になっているのですが、以前ライチョウ保護のために自分に何ができるか考えた結果、ライチョウのLINEスタンプを友人と一緒に制作しました。

利益が出た際には、ライチョウ保護にふさわしい形で寄付をする予定です。

アウトドアが大好きなそこのあなた、ぜひ使ってくださいね〜!!(*^◯^*)下の画像クリックで、スタンプショップに飛びます♪

宣伝が済んだところで、部屋の荷物をまとめてダイニングに降りていき、トマトチーズピザをいただきました。

チーズはヤクのチーズです。

独特な風味があり好みは分かれるかもしれませんが、この地域では貴重な食材です。機会があればぜひお試しあれ!

8時過ぎにドゥクラを後にし、さらに上を目指します。

 




途中の休憩ポイントにて

ドゥクラから1時間ほど急登を登った平地に、登山家や彼らをサポートしたシェルパなど、ヒマラヤに挑戦して命を失ったたくさんの人たちの慰霊碑が建つエリアがあります。

傍に石積みのイスがあったのでバックパックを置き、インナーを一枚脱いで腰掛けました。

そして少しの間、黙祷を捧げます。

目を開けると、タルチョが風で静かになびいているのが見えました。

昨日も見たクチバシが赤いカラスのような鳥が一匹、キャンキャンと鳴きながら旋回して僕の前に降り立っては、どうやらエサを探しているご様子。丸いものを見つけてそれを噛み砕こうとしましたが、しばらくして諦めて、一気に呑み込みました。

ひとり久しぶりに感じる静けさ・・・

山の中でキャンプをしている時のように、地球が回る音が聞こえないものかと耳を澄ましてみたりします。

カラスはしばらくすると、どこからかやってきたもう一羽と合流して、鳴きながら羽音を立ててどこかに飛んで行きました。

さあ僕もそろそろ前に進もう!荷物を背負い直します。

ここからは山容がまた変化して、登山道の雪が少し目立ってきました。

とその時、足元の氷に滑って転んで尻餅を突いてしまいました。

ヤバい、ケツの骨折れたかも!!

とっさに最悪の事態を想定しましたが、というのもそう思わざるを得ないほどの激痛が走っていて、救助ヘリに自分が運ばれている自分の姿が脳裏に浮かびます。。。

助けを呼びたくとも、今朝ドゥクラを後にしてからは誰にも会いませんでしたし、前方はずっと遠くまで大地が広がるだけで、人影は見当たりません。ケータイも繋がっていません。

ただエベレストベースキャンプに向かっていた途中に尻餅を突いてあえなく退散なんて、超カッコ悪い事態です。

仕方がないので、自分をだましだまし、ゆっくりと歩いてみることにします。

お尻のことは無理やり忘れながら歩きましたが、咳やくしゃみをする度に骨がジーーーーーンと痛みます( ;∀;)

幸いなことに、なんとか歩き続けられると思いました。

すると、どこからか僕のお尻の痛みを癒すかのように、優しいメロディーが聞こえてきました。

最初は誰かが音楽をかけているのかと思い探しましたが、どこにも人影は見当たりません。しばらくして気付いたのが、メロディーの正体はなんと、天然の水琴窟だったんです。

この自然現象に名前があるのかは分かりません。

雪が溶けて川を作り、氷の下の空間でパチパチ、ポコポコと美しい音を反響させていたのです。

途中からまた登山道の雪は減ってきました。

小さな植物だけが生き残ることを許される荒れた大地を、ただ進んでいきます。

今日初めて、登山者というか下山者2人とすれ違いました。

ネパールの山での挨拶は決まって「ナマステ 」です(笑)

ロブチェ(5,030m)では、大きな角を持ったかっこいいヤクが気持ちよさそうに休んでいました。

そして休憩を挟みながら、まだまだ進んでいきます。

途中にあったチョルテンと、僕のバックパック



前日の夕方にドゥクラで会ったバッファロー肉売りの少年が、上の方から降りてきたのが見えました。

僕がバッファローー!と叫ぶと、向こうもこちらに気付いたようです。少年のカゴの中を見ると、あれだけたくさんあった肉は消えていて、聞くと最後の2箇所(ロブチェとゴラクシェプ)で全て売り切ったとのことです。

おめでとう!と言うと少年は誇らしげに笑い、またナムチェまで戻りバッファローとヤクの肉を持って上がってくることになっているんだと言いました。本当に体力のいる仕事です。

今日の目的地ゴラクシェプのおすすめ宿を聞くと、「ブッダがいいよ」と言いました。Wi-Fiが無料とのことでした。

エベレストベースキャンプに最も近いポイントでWi-Fiが使えちゃうのかぁと正直悲しいような気持ちがしましたが、せっかくのご縁なのでそこの宿に向かってみることにしました。

少年と握手をして別れると、その後握手をした右手から、においがしてきました。

といっても獣臭なんかではなく、芳香剤のような香りでした。悪く言えば、昔じいちゃんが付けてたポマードのような香り(笑)肉を扱う少年なりの気遣いなのでしょうか?それともやっぱり、ポマードォォ??

そしてついに!ゴラクシェプ(5,160m)が見えてきました。ここがエベレストベースキャンプ手前、最後のロッジのあるポイントです。

ブッダというロッジはすぐに見つかりました。受付が2階だったのですが、これだけ歩いてきてさらに標高がここまで高いと、荷物を部屋まで上げるのも一苦労です。

薄暗い受付に行き、バッファロー少年に教えてもらったんだけどとスタッフに伝えると、ああ、聞いてるよと西部劇に出てきそうな感じでボソッと言われました。西部劇がどんなものかは知りませんがw

バッファロー少年は親切にも電話をしてくれていたようです。ありがとう!!

部屋に案内される時、Wi-Fiは無料なの?と聞くと、小声で紹介だから無料でいいよとのことです。繋ぐか繋がないかは別として、ありがたいサービスです。

時刻は14時を回っていました。

予定ではカラ・パタール(5,643m)にこの日に行くことにしていたのですが、日没までに帰ってこれるかが、どうも心配でした。

宿のスタッフに聞いてみると、往復3時間とのこと。

予定通りにことが進めば、宿に17時到着、日没は最近18時くらいだから、行けます。

スタッフも、日没までには帰ってこれるよとサラッと言いました。

ということで、荷物を部屋に置き、スマホとバッテリーだけの身軽になって、再スタート!!

 




宿のあるゴラクシェプからカラ・パタールまで、約500mの標高差をガーッと登っていきます。

朝出発したドゥクラは標高が4,620mだったので、5,643mのカラ・パタールまで、一日で約1,000mの標高差に挑むことになります。

身体は大丈夫でしょうか。。。

まあゴラクシェプまで下ってくるんだから問題ないでしょ、と高を括って登り始めたは良いものの、ここが想像以上に過酷で、今回のトレッキングの中で一番死ぬかと思った箇所です。

登りですれ違う人が誰もいなかったので、心細かったこともさらに追い打ちを掛けました。

あ、そうそうお尻みたいな岩を見つけました。

ってマジで、それどころじゃないねん!と関西弁で突っ込んでお尻をひっぱたきましたが、百ゼロで手が冷えていた僕の方がダメージありました。

しまいには、今日お尻を痛めたことを思い出し、またジーンと痛み始める始末。

ようやく、あそこがゴールかな?そうであってくださいと“思いたい”場所が見えてきました。

やっぱり変なものが建ってるから、あそこに違いありません。

この時もうほとんど極限状態で、登るという意志だけで登っているような、本当にそんな感覚でした。

エベレストの頂上付近では、苦しくて出したくても一歩がなかなか出せないと聞いたことがある気がしますが、この時の僕は、十歩くらいが限界でしたね。

そして、そしてついに!

ドドーン、

カラ・パタール(5,643m)に着きましたーーーーーーー。

 




あ、嘘です。本当のことを言うと、頂上は普通に落ちたら死ぬように尖っていたので、5,635mまでしか僕は行けていません。

コチラが証拠

YAMAPもやってますんで、ぜひ仲良くしてください!!

▶︎YODA

カラ・パタールからのパノラマは、なかなか素晴らしかったです。

日本の山のようにどの山がどの山というのは分かりませんが、それだけではなくなっ自分が今生きてるのか死んでるのもよく分かりませんでした(笑)

ここが天国と言われれば、そうかもしれないなとも思えてきます。誰に、なぜこんなことさせられてるのか分かりませんが。

もしくは地獄?

しばらく写真や動画を撮っていると寒さでバッテリーが落ち、体力的にも精神的にもそろそろマズいなと直感でも感じたので、引き返すことにしました。

スマホのバッテリーは少し高度を下げると復活しました。

下山中に2名2組に会いました。みんな僕よりもスイスイ登っているような気がした。

同時に、この人たちも僕と同じように死んで登らされてるのかな、と思いました。(相当逝ってますよね)

後半の2組にエベレストの位置を聞いてみました。ネパール人ガイドらしき男は僕の伝え方が悪かったのか、分からないと言い、西洋人の青年がそれをフォローするように「あの真ん中のだよ」と教えてくれました。

あれが世界最高峰のエベレストさんかぁ、どうもホテルエベレストビューぶりですー。としみじみ見入ってしまいました。

2人にさよならをして帰路を急ぎます。

途中、具合悪くなり、オエーッとなりまじめました。体が悲鳴を上げています。

そして宿に着くやいなやダウンで、部屋に篭りました。

お酒を飲み過ぎた時のように、トイレに吐きに行き、しばらくトイレから出られなくなりました。

何分経ったか、いや何十分?やっと立ち上がる決心が付き、部屋に戻りました。

部屋の水筒の水はガチガチに凍ってました。

もう具合が悪すぎて寝るしかないと思い、無理やり寝ました。

本当に自分はもう死んでるのではないかと思いました。

誰かが部屋のドアを開けて「お前はもう死んでいる」とケンシロウのようなことを言ってきたなら、僕は何も疑わずにそれを受け入れたと思います。

もうこんなの絶対に地球じゃない!夢なら覚めてくれ!!!

というところで、宿のスタッフが夕食のために起こしに来ましたが、夢ではなく現実で、体調が死ぬほど悪いからと、申し訳ないけど断らせてもらいました。

どうしようもない客だと思われたかもしれません。

体が悲鳴を上げている。

そして、寒い・・・

(この日の日記は本当にしんどかったので、後半部分は翌日書きました)



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