『風の谷のナウシカ』には、核爆発によって多くが破壊された火星で生き続ける人間のストーリーという“都市伝説”があります。
火星の重力は地球の3分の1程度という意味では、「風使い」も全くあり得ない話でもないのかもしれません。
しかし火星の平均表面温度はー43℃で、最低温度がー140℃にも達することを考えると、ちょっと現実離れしている都市伝説のようにも感じます。
ただ実は『風の谷のナウシカ』には、都市伝説ではないリアルなストーリーモデルが存在するのをご存知でしょうか。
まずストーリーのおさらいですが、『風の谷のナウシカ』では、極限まで科学技術の発展した人類社会が、「火の7日間」と呼ばれる最終戦争によって崩壊してから1000年余り経過した世界が描かれているということです。
火の7日間の結果、地上には腐海(ふかい)という巨大な森が広がり、腐海には蟲(むし)と称される大小さまざまな生物が多数生息していました。
そして拡大する腐海に生育する菌類が放出する「瘴気(しょうき)」は蟲たち以外には猛毒のガスであるため、世界を破滅に追いやってしまった人類はそれに怯えて暮らす羽目になってしまったのです。
しかし最終的にナウシカは重要な事実に気が付きました。
人類が恐れていた腐海は、実は汚染された大気や土壌を「浄化」してくれていたのです。
この『風の谷のナウシカ』のストーリーのモデルは何なのかというと、1956年に熊本県水俣市で公式発見された『水俣病』にまつわるエピソードです。
水俣病は日本の公害の先駆けとして教科書にも載っているので、知らない人はいないでしょう。
水俣湾に垂れ流しにされた化学工業会社の廃液の中にふくまれたメチル水銀により、水銀汚染された水俣湾の魚を食べたことが原因で、多くの方が亡くなりました。
ネットで被害者の写真を検索するだけでも、その悲惨さが伝わってくると思います。
当時、「海は死んだ」とまで言われました。
しかししばらくすると、どういうわけか海の状態は徐々に回復していったのです。(現在でも被害に苦しんでいる方はいます)
それはなぜかというと、メチル水銀を分解してくれる菌が出現したからです。
驚くべきことに、水俣湾に生息していた菌が水銀を含んだ海の中で独自に進化し、水銀を食べて分解し、無害なものに変えるという働きをしてくれていたのです。
宮崎駿監督はこの汚染された水俣湾が菌によって回復していくエピソードに着目し、風の谷のナウシカの腐海を発案したということなのです。
この一連の話は、記憶に新しい3.11(東日本大震災)直後、放射能汚染が騒がれた時に、主にネット上で話題になりました。
現在の国際社会が抱えるプラスチック問題しかり、人類が環境に害のある行為を繰り返したり、はたまた命を奪い合う戦争を繰り返したりするのは、残念ですが、ひょっとするとそういう宇宙全体としての運命なのかもしれません・・・
そして自然界は人類の破壊行為に対して時に罰を与えたり、時に許したりしながら、時間は進んでいくものなのかもしれません。
そういえば以前、こんな記事を紹介したことがありました。
あなたは自然の回復力に対して、どう思いますか?
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